
レザークラフトの楽しみの一つが”革選び”です。作品のイメージを膨らませながら、どんな皮を使おうか想像するだけでワクワクします。
とは言うものの、これからレザークラフトを始めようとする方には結局どれを選べばよいのかわからず、とりあえずヌメ革を選ぶ方も多いのではないでしょうか?
私も最初はそうでしたが、レザークラフトで使う革には、本当にいろいろな種類や部位があり、それぞれに特徴があります。革をよく知り、理解すれば、作品に適した革を自由に選ぶことができ、レザークラフトをもっと楽しめるようになりますよ。
”皮”と”革”の違い
レザークラフトの革はもともと本物の動物の”皮”。
皮は当然ですが、そのままでは腐ってしましますよね。
そこで表皮の毛を取り除き、鞣し(なめし)と呼ばれる腐敗防止処理を施します。この処置によって作られたものが”革”となります。
つまり、なめしとは”皮”から”革”へと変化する大切な工程というわけです。
なめしの種類
革のなめし方には、大きく分けてよって”タンニンなめし”と”クロムなめし”の2種類あります。
製法が全く違うので、特に革の質感に大きな差が出ます。
一般的にはなじみが薄いのですが、レザークラフトでは基本的な知識です。まずは、この2種類の”なめし”の違いを知り、特徴をよく理解しましょう。
タンニンなめしの特徴
タンニンなめしとは、植物性の”タンニン”(渋のこと)を使って革をなめす製法です。昔ながらの製法なのでとても手間がかかり、完成まで5か月かかることがあります。
腰があり、どちらかというと硬い革です。傷がつきやすく、色の変化が大きい製法です。
短所のように思われますが、手縫いのレザークラフト用としては、この腰の強さがかえって扱いやすく、縫いやすくて作りやすい革です。
色の変化も、使っているうちに形がなじんで来るので、変化そのものをエイジングとして楽しめます。また、エイジングによって傷にも強くなります。多少ひっかいた程度なら指でさするだけで傷が完全に見えなくなるほどです。
詳しくは「革の経年変化(エイジング)のコツ」にて紹介しているので是非読んでみてください。
クロムなめしの特徴
塩基性硫酸クロムと呼ばれる化学薬品を使ってなめした革のことです。
タンニンより早くなめすことができ、とても滑らかで美しい仕上がりになります。
さらに、耐熱性、染色性、弾力性いずれもタンニンなめしより優れており、現在の革製品はほとんどがクロムなめしが使われています。
素材としてタンニンなめしより優れているクロムなめしですが、レザークラフト(特に初心者)として見た場合、柔らかすぎて使いにくい革です。
例えばこんな簡単なケースを作る場合、タンニンなめしの革は腰があるので、一枚革でもケースの本体として使うことができます。
一方、クロムなめしの革は腰がなく、ふにゃふにゃ。ケース本体に使うには芯材が必要です。心材を使う場合、両面に革を張り合わせる必要があります。
加えてコバ処理でスリック(コバ磨き)が難しいのでヘリを返してコバを隠す必要があり、ヘリを返すにはヘリを漉いて薄くしなくてはなりません。
さらに柔らかすぎて手縫いの力加減が難しく、強く引きすぎるとすぐにシワになってしまいます。均等に縫うにはミシンが必要。
ということで、素材としては優れていても、取り扱いが難しく、かなりの熟練した技とミシンや漉き機などの高価な道具が必要なのです。
革の各種名称
レザークラフトでよく使う革の用語として、銀面、床面、コバがあります。
クラフト関係の書籍でも知っていて当然のように使われる用語なので覚えておきましょう。
銀面(ぎんめん)
革の表側の部分です。革がまだ動物の皮だったときの”皮膚”にあたる部分です。
”吟面”と表記しているサイトもありますが、革業界では銀面が正しいようです。
繊維が緻密に絡み合っているの表面はとても滑らか。見た目も美しいので銀面を表側にして使うのが一般的です。
↓革の銀面と床面(下記にて説明)の比較画像です。一目で分かりますね。
床面(とこめん)
革の裏側の部分です。銀面と比較すると繊維が荒く、ざらざらしています。場合によってはぽろぽろと繊維カスが落ちるので見た目はよくありません。
作品として使うには、トコノールと呼ばれる処理剤を使って磨くことで毛羽立ちを抑え、手触りや見栄えをよくしています。
↓未処理の床面とトコノールで磨いた床面の比較
コバ
革の切り口のことをコバと呼びます。
革をカッターで革を切ると、このように革の層がよく見えます
このままでは切断面の角が立ち、手触りや見た目がよくありませんし、革の繊維がほつれやすく耐久性にも問題があります。
そこで作品として作る場合は下の画像のようにコバを磨いて仕上げるのが普通です。
実際の処理はコバの磨き方で詳しく説明しています。
革の扱い方
比較的丈夫とされているオイルレザーでも、爪を立てるだけで簡単に傷がつきます。湿気や日光にも弱く、押し入れなどに入れておくとカビが発生してしまいますし、直射日光が当たると変色してしまいます。革を保管する際は、風通しがよく、日の光がなるべく当たらない場所を選びましょう。
↓気を付けていても製作に夢中になると気が付かないうちに傷をつけてしまうことも・・・
爪を短く切ることも大切です。
革の選び方
革の部位
革はもともと動物の皮膚ですから、同じ革でも部位によって硬さや質感が違います。
実際にお腹の方の革は柔らかく、背中の革は固くなっています。
A4サイズにカットされた小さな革では違いが分かりにくいのですが、背中からお腹まで大きくカットされた革を使うとはっきり分かります。
また、革には伸びやすい方向と伸びにくい方向があり、部位によって繊維の伸び方が違います。
下の図は一頭分の革を背中で半分にした模式図で、繊維方向を書いたものです。矢印の方向は繊維が走っているので伸びにくく、矢印と垂直の向きに伸びやすい
でも、趣味でレザークラフトをするだけなら丸々一頭分の皮を買う人は少ないですよね。
そこで簡易的に革の曲げてみることで繊維方向を知ることができます。
曲がりやすい向きがわかれば、例えば財布で動きのある部品には伸びやすい方向を選択した型取りができ、より実用性のある作品が作れます。
(※細く短冊切りにした革を実際に引っ張ってみてもよい。)
↓比較的曲げやすいので左右に伸び易いことがわかる
90°回転してみると曲がりにくい。この場合、縦方向に伸びやすいことがわかる
革の単位
レザークラフトの革はデシと呼ばれる単位で大きさが表示されています。
1デシ=10cm×10cmのサイズになります。
例えば、A4サイズならおおよそ6デシになります。
もう一つ、”半裁”で販売していることがあります。
半裁とは、一頭分の皮を背中から半分に裁断した革のこと。牛の場合、おおよそ250~300デシほどになります。
初心者向きの革ではありませんが、バッグなどを作りたい場合は半裁で革を購入する必要がありますね。
革の厚さ
革の厚さは作品を作りにはとても重要です。
革の原厚はおおよそ2~4mm程で、漉くことで任意の厚さにすることができます。
革の厚さが薄いほど革が曲げやすくなるので作品の外見だけでなく、使い勝手も左右します。
とはいっても工業用の専用機械がないと革全体を均一の厚さで漉くことはできません。通常、0.5mm、1.0mm、1.5mmとあらかじめ漉いてある物を購入するか、革業者から購入するときに、任意の厚さに漉いてもらいます。(持ち込みでも漉いてもらえます。)
一応カンナを使って漉いたこともありますが、均一に漉くことはできませんでした。
詳細は豆カンナで革漉きにチャレンジで紹介しています。
キーケースや財布といった小物の場合、最初は1.0mmと1.5mmの革を用意すれば大抵のものは作れます。
タンニンなめしの革
市販のタンニンなめし革は、処理によっていろいろな特徴があります。
代表的なものをいくつか挙げてみました。
ヌメ革(【ヌメ革】とは?)
タンニンでなめし、表面処理を施さずに仕上げたそのままの革。最も革らしい質感で、経年変化によって褐色に変化するので、エイジングを楽しむことができます。
本来は染色もしていない革のことですが、ショップによっては染色された革もヌメ革と表記している場合があります。
タンロー(【タンロー】とは?)
タンニンなめしろうけつ染め用の革の略。
染色することを前提としているので、より白くなめしたヌメ革のことです。含有オイルは少なめ。
白に近い色なので、染色した時の淡い色も忠実に再現できます。
サドルレザー(【サドルレザー】とは?)
タンニンなめしのヌメ革の銀面をグレージング加工で磨き、艶を出した革のことです。グレージング加工とは、ガラス等で圧をかけながら磨く処理のことで摩擦熱で銀面が引き締まります。個人的にはコバ磨きなどはやりやすい印象です。
オイルレザー
オイルを多めに含ませた、艶のあるヌメ革に用いられる名称です。
サドルレザーと比べると表面に光沢はありませんが、ヌメ革よりしっとりしていて使いこむほどに銀面が磨かれ、光沢が生まれます。
実のところ特に定義があるわけではないので、オイルの含有量などは製品ごとにバラバラです。サンプルなどを取り寄せ、実際に見比べたほうが良いです。
カラーレザー
染色して色を付けた革のこと。
革の中まで染色しているものを芯通しとよび、切り口の色が変わらないのでコバ処理が楽です。(写真左側)
一方、中まで染色されていない革はコバを一度染色してから磨く必要があります。
革を漉くと、床面が未着色の部分が露出する点にも注意。(写真右側)
ブライドルレザー(【ブライドルレザー】とは?)
タンニンなめしの革をロウに漬け込み、耐久性と耐水性を向上させた革です。
下の写真、左側に白く浮き出ているのはロウで「ブルーム」と呼ばれています。ブライドルレザーの証拠。ちなみに布で磨くと簡単に落ち、深い光沢が現れます。
イギリスの馬具に使用するために作られた革として有名です。ただし、あまり市場には出回っていませんし、結構高価な革です。
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