しっとりとした艶と光沢のあるコバの磨き方について、ヌメ革を使って詳しく説明します。
基本を身につければ、写真のような光沢も可能。
コバが丁寧に仕上げられた作品は見栄えがとてもよくなります。しっかりコバ磨きをマスターしましょう。
ちなみに、コバ磨きの道具を利用すれば床面も磨くことができます。
詳しくは「革の床面磨きの方法とコツ」参照
(コバ・床面についてはレザークラフトで使う革の基礎知識参照)
コバ磨きの道具
コバ磨きは色々な方法があるので道具も様々。
よく利用する工具を一覧で紹介しますが、すべてそろえる必要はありません。
特に必要なものには(必要)と記載しました。他の道具は興味があれば試してください。
ヘリの処理
コバの角をヘリと呼びます。
ヘリがあると手触りがよくありませんし、引っ掛かりができるのでコバが傷みやすくなるのでヘリ落としを使って角を落とします。
- ヘリ落とし
(必要) - 豆カンナ
(ヘリを大きく落としたいときなど) - NTドレッサー
(粗削り用) - 紙やすり#240~#400
(仕上げ磨き) - スポンジ研磨剤(#320~#600相当)
(紙やすりより使い勝手が良い)
コバを磨く
磨き工具はいろいろなものが役に立ちます。
スリッカーはミゾが入っているのでコバを整形しながら磨くことができ、初心者向でも比較的扱いやすい道具です。薄い革を磨くときは”帆布”が扱いやすくて便利です。
- スリッカー or ヘラ
(主に仕上げ用) - ヘチマ or 帆布
(荒磨き~中磨き用) - ルーター
(ルーターを使ったコバ磨き参照)
コバの仕上剤
実は、コバは水で磨くだけでしっとりとした光沢を出すことができます。
ただし、それだけでは耐久性がないので通常はトコノールと呼ばれる水で薄めた木工用ボンドのような仕上剤を塗布しながら磨きます。
CMCも同じ用途・使い方をしますが、こちらは粉を水(湯)で溶かしてから使うので少し面倒。でもコスパは最強です。
コバの磨き方
今回、レザークラフトでよく使われるタンニンなめしのヌメ革を使い、両面を接着してからコバを仕上げて見ました。
コバ磨きの工程。右上から”面取り”、”やすり掛け”、”仕上げ磨き”です。
革の接着
綺麗にコバを仕上げるには革の接着も重要です。
接着剤をできるだけ薄く塗って圧着することで、コバを仕上げたときに境界線がなくなり、まるで一枚の革のような仕上がりになります。
接着剤はゴムのりや木工用ボンドを使います。
私は扱いやすいゴムのりをよく使いますが接着力の必要な部分には木工用ボンドを使っています。
接着剤を薄く塗るときに便利なのが、100均で買ったクッキング用のシリコンヘラ。
先端は筆先のようにしなやか、根本はコシがあるので2通りの使い方できます。
シリコンヘラの先端部分を使ってゴムのりを塗布し、根本のコシのある部分で薄く塗り伸ばすことができます。
ゴムのりは接着する両面に薄く塗り、接着剤が乾燥してから圧着します。
接着面がズレないように慎重に貼り合わせましょう。
貼り付けたらローラーなどで強く圧着します。ローラーは手で押さえるよりもりっかり圧着することができます。ただし、直接ローラーを使うと銀面に傷がつく可能性があります。クリアファイルのような適当なシートを間に挟むと綺麗に圧着できるのでお勧めです。
ヘリを処理する
コバの角をへり落としで面取りします
面取りはヘリ落としの角度が一定になるように作業するのがコツ。ここで均一な仕上がりにするとコバ磨きがとても楽になります。
ヘリ落としは切れ味が悪くなったらすぐに研ぎ直しましょう。切れないヘリ落としでは綺麗に仕上がりません。
ちなみに、豆カンナを使ってヘリを落とすこともできます。
カンナは刃を調整しないと失敗するので普段は使いません。(ヘリ落としよりも深く角を落としたいときに使います。)
↓豆カンナの使い方はこちらを参照ください。
↓豆カンナを使ったヘリ落とし
段差はヤスリで整える
革の貼り合わせ面に段差があるときは、ヤスリを使って段差を取り除きます。
ホームセンターで手に入るドレッサーや紙やすりをよく使っています。
ドレッサーは段差が大きいときの粗削り用。紙やすりは#240→#400を使って面を整えます。
ちなみに耐水ペーパーではなく、木工用の空とぎペーパーを使ってください。耐水ペーパーは色の濃いサンドを使っているのでコバに粒子が入り込み、汚れてしまいます。
丁寧にやすり掛けすると、ご覧の通りコバの段差がほぼなくなります。
コバ磨きの前にこの段階まで仕上げてください。ここで段差がある場合、磨いて段差を消すことはできません。
荒磨き
最初に水を少量コバにしみこませ、軽い力で撫でるように磨きます。
荒磨きはコバ磨き用の帆布が便利です。
荒磨きなので表面が多少デコボコしても構いません。
中磨き
荒磨きの段階では表面がデコボコしているはずです。
10分から20分ほどしてコバの水分が完全に乾いてから、今度はスポンジ研磨材(#320-#600)を使て表面のデコボコを整えます。
スポンジ研磨剤は紙やすりより持ちがよく、裏面がスポンジになっているのでコバにフィットして使いやすいです。
スポンジ研磨剤でコバを整えたら、もう一度帆布で軽く磨くと表面のデコボコが取れ、非常に滑らかなコバになります。デコボコしていたら、滑らかになるまで”研磨”→”磨き”を繰り返します。
↓中磨きを終えた段階。
この段階では表面が滑らかですが、コバが曇っていて光り輝くような艶は出ていません。
仕上げ磨き
中磨きを終えたら、仕上げ磨きをして艶を出します。
ここでコバの耐久性を上げたい場合はトコノールやCMCなどの仕上げ剤を塗布します。仕上げ剤を塗布する前に、少量の水を含ませると浸透が良くなるのだそうです。
※ちなみに、耐久性を考えなければ水だけでも十分深みのある光沢に仕上がります。
仕上げは”表面が滑らかな”(←ここ重要)スリッカーやヘラなどを使い、適度な力加減で磨きます。
【弱すぎると光沢が出ませんし、強すぎるとコバが濃く変色してしまいます。この力加減は言葉で説明できないので、色々試しながら感覚を覚えてください。】
ちなみに、表面がデコボコしている帆布などは仕上げ磨きには使いません。どんなに丁寧に磨いても表面がざらざらして曇った光沢になってしまうからです。
写真で使っているのは陶芸用の木ベラ。表面がとても滑らかで、微妙に湾曲しています。なんとなく購入したものですが、意外と使いやすいヘラです。
丁寧に仕上げると、しっとりとした艶を出すことができます。
↓コーンスリッカーは初心者に最適な道具です。
こちらは水だけで磨いてみました。最初のころの記事なので今思えば少し磨く力が強かったですね。コバが濃く変色しています。
私の自己流ですが、最初は少し力を入れ、スリッカーを大きく動かして全体的に磨きます。
↓動画で見ていただけると良くわかると思います。
仕上げでは力を弱め、小刻みにスリッカーを動かしながら磨いていきます。
こうすると深みのある艶がでます。(自己流の磨き方ですが、参考までに)
丁寧に磨いていくと、表面が滑らかになって深みのある艶が生まれます。
↓このように水だけで磨いても綺麗に光沢が出るのです。(磨く力が強すぎて色が濃くなってしまいました。これはちょっと失敗です。)
コバを染色する
染色された革には、染料が浸透しておらず、銀面の色とコバの色が異なることがあります。(写真右側のような状態)
また、たとえ染料が浸透していても、銀面よりも色が薄い場合があります。(下記写真の様な状態)
↓コバを磨いた状態。
コバを磨くことで多少は濃くなりますが、それでも銀面より薄いです。
コバの色は銀面よりも濃い方が締まりが出るので、染色してからコバを磨くとキレイに仕上がります。
染料はクラフト染料を使います。
色が濃い場合は水で薄めることができるのでとても扱いやすい染料です。
適当な筆を使って塗ります。
紺色の革を染色してみました。紺色の染料だけでは青っぽい色だったので、5対1の割合で黒を混ぜました。(黒を混ぜるときは少しでOK。入れすぎると黒になってしまいます。)
筆を使ってコバを染色します。
染料を塗りすぎると銀面に浸透してシミになります。少しづつ、様子を見ながら染めるとよいでしょう。
↓染色した状態がこちら。若干薄いですが銀面とほぼ同じ色です。
↓磨くことで色が濃くなるので丁度よい色合いになりました。
染色しないで磨いたモノと比べてみるとその差は歴然です。
↓染色しないで磨いたモノ(比較画像)
ルーターを使う方法
スリッカーの代わりにハンドルーターを使ってコバを磨く方法があります。
基本的な手順は変わりませんが、手で磨くよりスピーディーに作業することができます。
ちなみにルーターとはモーターで先端が高速回転する電動工具の一つ。
ルーター本体は購入する必要がありますが、コバ磨き用のビットは簡単に作ることができます。
詳しくは電動ルーターを使ったコバ磨き機で作り方と使い方を紹介しています。
コバ磨き用ビットの材料は木材と真鍮ピンで自作することができます。
いずれもホームセンターで手に入るものばかり。
コバ磨き用ビットの作成はルーターでビットを回転しながら紙やすりでミゾを作るだけ。とっても簡単です。
手作業よりも圧倒的に素早く磨くことができます。
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