レザークラフトに限った話ではありませんが、革の経年変化(エイジング)は楽しみの一つですよね。
特にタンニンなめしのヌメ革は、使い始めると日に日に色が変わり、革の表情がどんどん変わるので使っていてワクワクします。
今回、エイジングのコツなどをまとめてみました。参考になれば幸いです。
そもそも経年変化(エイジング)とは?
革を使っていると、日光の光や手の脂などを革が吸収し、革の質感や色が変化することを言います。
経年劣化とは異なり、よく手入れをすれば経年変化した革は汚れや傷に強くなり、多少の雨なら弾くようになります。
タンニンなめしのヌメ革はエイジングによって独特の光沢が生まれ、下の写真のように飴色に変化していきます。
↓肌色のヌメ革が飴色に経年変化しました。
基本的にどんな革でも経年変化する?
基本は、経年変化はどの革でも起こりますが、変化の度合いは革によって異なります。
タンニンなめしとクロムなめしの違いは?
タンニンなめしは経年変化し、クロムなめしは”経年変化”ではなく”経年劣化”という言い方を目にしますが、私は厳密には間違いだと思っています。
どんな革でもそれなりに経年変化するからです。変化の度合いと言いますか、方向性がそれぞれ違うのです。
確かに、タンニンなめしの革は色の変化が激しく、誰が見てもその変化に気がつくでしょう。対するクロムなめしの革は基本的に色の変化があまり起こりません。では何が変わるのかというと、表面に若干の艶が出たり、質感の変化として現れます。
昔、クロムなめしの革財布を使っていましたが、使い込むとなんとも言えない、手に吸い付くような質感に変化していきました。
クロムなめしは見た目の変化ではなく、内面の変化を楽しむレザーだと考えています。
大きな変化が楽しめるヌメ革
一般的に、より大きな変化を楽しみたいのなら、何と言ってもタンニンなめしのヌメ革が一番です。
色の変化が大きく、ヌメ革をうまく経年変化させると綺麗な飴色に変化するので、レザークラフトで一番人気のある革です。
比較的安価に手に入るのもうれしいですね。
育てがいのあるヌメ革
変化が大きいので、ヌメ革のエイジングは生き物を育てているような感覚です。
というのも、エイジングする前のヌメ革は汚れや傷がつきやすく、いかにも弱々しいと言った印象。
ですが、丁寧にワックスやオイルでメンテナンスすると、半年ほどで色が濃くなり、艶が出てきます。
ここまで育てると、多少の引っかき傷ができても指で揉むとキレイに消え、非常に丈夫な革に成長します。
↓引っかき傷が消える様子。ちなみに、この動画の革はヌメ革にニートフットオイルをタップリ塗ってからエイジングさせたものです。
エイジングのコツ
ニートフットオイルで処理する
ニートフットオイルとは良く精製された”牛脚油”のことで、革によく浸透してよく馴染みます。オイルを塗るときにムラになることがありますが、時間とともに広がるのでほとんどムラになることはありません。
というわけで、革のエイジングには、このニートフットオイル処理がおすすめ。綺麗にエイジングされますし、汚れの付着も抑えることができます。
ただし、必ずしも塗らなければならない事はありません。自然と使いながらエイジングさせたいという方もいるでしょう。
また、革の種類ごとにエイジングの影響が変わるので注意。
心配なら、使用するときは端切れなどで仕上がりを確認したほうが良いです。
ニートフットオイルを塗るにはホームセンターで手に入るハケが便利です。毛先が柔らかく、腰のあるハケが良いです。
そのほか、毛羽立たない綿の布地などでも代用できます。
オイルを塗るときは、できるだけ手早く塗ります。
薄く塗っても、たっぷり塗ってもOK。お好みで量を調整しましょう。
ニートフットオイルの誤った情報として、「薄く塗って素早く拭き取る」と書かれているWEBサイトをよく目にします。(特にWEB掲示板など)
プロの職人さんが薄く塗って手早く拭き取ることを推奨している話は聞いたことがありません。
みんな口をそろえてタップリ塗るといっています。
プロの職人さんによる牛革バッグのお手入れ方法
~抜粋~
「乾いていると思われるところにはタップリ塗る」
「塗ったら暫らくそのまま放っとく」
「塗ってすぐ拭き取っちゃだめ」
「年に2回でも3回でも塗る」
「革の油っていうのはいくら塗っても塗りすぎって言うことはない」
ある作家さんはニートフットオイルをタップリ塗っていましたので、私もその意見に習って、たっぷり塗っています。
実験的に薄く塗ったこともあるのですが、やっぱりタップリ塗ったほうがエイジングも良好でした。
オイルを塗った直後は吸収しきれないオイルが光っています。
2,3分もしないうちに吸収されます。
1時間後、ハケムラがなくなり、オイルが革全体に馴染みました。
オイルを塗りすぎたかと思いましたが案外いい感じです。
エイジング後
これは革砥ケースなので、本来は青棒(研磨剤)で汚れやすいのですが、ほとんど汚れもなく、傷もつかず、きれいな状態で経年変化しています。
日光浴
ヌメ革の経年変化には日光浴が欠かせません。
特に最初に使う前の日光浴は大切。
使用する前に日光浴すると、一時的にエイジングが促進され、革の表面が固くなって傷や汚れが着きにくくなります。
(ニートフットオイルを塗った後に日光浴させます。)
こうすることで、その後使いながらエイジングした時にきれいな状態でエイジングが進んでいきます。
日光浴は窓際に置くだけ。夏場なら7日~10日ほど、冬場はひと月ほどかけてじっくり日光浴させます。
ムラができないように一日置きに裏表変えながら均一にエイジングさせることを心がけましょう。
日の光に当てることで、白かった革がこんがりきつね色に変化します。この色になるまで日光浴させると、表面に艶が出てスベスベとした手触りになります。
↓日光浴前
↓日光浴後(約2週間)
日光浴でエイジングが終わったら、クリームを塗って仕上げます。
というのも、直射日光は少なからず革にダメージを与える行為です。革の内部が乾いてしまっているので、この状態で使用すると劣化してしまいます。
使用するクリームはヌメ革用クリームがあります。商品説明によると、「急速な色変化を緩和します」と書かれていて、UVカット機能があるようです。
私はCollonil 1909を使っていますが、ヌメ革用クリームを試したことがないのでどちらが良いかは判断できません。
クリームの説明書には「少量取り、皮革に均一に塗布してください」と書かれていますが、ヌメ革の場合、前述の通り塗りすぎることはありませんからタップリ塗って問題ありません。むしろタップリ塗ったほうがムラにならず、良好です。
わざとムラになるように塗布してみました。
10分後にはクリームが浸透し、ムラがなくなっています。
ヌメ革は、オイルのムラを極端に心配する必要はありません。
この状態で1週間ほど寝かせ、オイルをよく浸透させます。
オイルが浸透したら、綿地の布で軽く乾拭きし、余分なオイルを拭き取って完成です。
この後は普通に使いながらエイジングを楽しみましょう。
ただ、半年程度は汚れや傷がつきやすいので丁寧に取り扱うことも忘れずに。
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