縫い穴をあけた革を綺麗に縫い合わせる、”手縫い”はレザークラフトの醍醐味の一つ!
レザークラフトでは、糸の縫い目が作品の一部であり、作品の出来に大きく影響するといっても過言ではありません。ポイントさえ分かれば誰にでも綺麗な縫い目ができるので、一つ一つ丁寧に作業を進めていきましょう。
綺麗な縫い目の下準備
縫い穴を作る
綺麗な縫い目を作るには、縫い穴がまっすぐ均一に開いていなければなりません。
ガイドラインで縫い代のラインを引き、菱目打ちで等間隔の縫い穴を事前にあける必要があります。
1、ガイドラインを引く
2、菱目打ちで縫い穴を作る
針と糸の準備
針はレザークラフト用の針を準備し、新品を使うときは針先を丸めると使いやすくなります。
針に糸を通す方法も独特なので、詳しくは下記のリンクを参考にしてください。
革を縫う
ここでは説明が分かりやすいように、表側を茶色、裏側をナチュラルと色分けした革を使って説明することにします。
糸の縫い方
レザークラフトは平縫いと呼ばれる縫い方が基本です。表側と裏側からそれぞれ針を通して縫い進める方法です。
まず、縫いはじめの穴に表側(菱目打ちを打ち込んだ方)から針を通します。
通した糸が表側と裏側で同じ長さになるように通します。
縫い進めるときも、常に表側から針を通します。
↓最後まで引っ張らず、輪っかを少し残した状態にする
表側から通した糸は、”進行方向と逆側の”ひし形の角方向へ寄せ、隙間を作ります。下の写真の例では、左上方向がひし形の角です。
裏側から通す針は、この隙間に通します。
(よく、「下に通す」とか、「上に通す」という表現を使っているサイトを目にしますが、ひし形の角がどちらを向いているかによって上下は逆になります。大切なことは、ひし形の角がどちらを向いているかということなので、誤った表現をしているサイトには注意してください。)
糸をギュッと引き締め、縫い目を整えます。あまり強く締めすぎると、革にシワが寄りますから、革の様子を見ながら、力を加減しましょう。
以降、この繰り返しで縫い進めます。
こうして縫い進めると、表側は糸が斜めに通り、裏側は直線的に糸が通ります。
同じ力加減と、正しい手順で縫い進めれば、このように均一できれいな縫い目になります。
一方で、誤った手順や、力加減がバラバラだと、下の写真のようにちぐはぐな縫い目になってしまいます。
縫いはじめの手順
革の縫いはじめは、たいてい負荷がかかる部分なので、折り返し縫いをすることで丈夫に仕上げるのが普通です。
(1) まず、図1のように端の穴から3目手前の穴に糸を通します。ただし、負荷がかからない箇所や外見を重視する場合、縫い代が短い場合、または写真1のようにコバに縫い糸をかける場合は端の穴から縫い進めることがあります。
(2) 端に向かって3目縫います
(3) 端まで来たら、折り返して残りの部分を縫い進めていきます。
糸の始末
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縫い終わったら、糸が解れないように糸の始末をします。
きれいに糸を始末すれば、末端が目立たずきれいに処理できます。
裏側が目立たない場合
裏側が目立たない場合は、裏側で型結びすれば十分です。
まず、最後まで縫い終わったら、2~3目返し縫いします。
返し縫いしたら、裏側から糸が出た状態にします。
ボンドを少量塗布し、型結びします。
糸の末端をハサミで処理し、ハンマーで軽くたたけば結び目はほとんど目立たなくなります。
ちなみに、糸の始末で使用するハサミはとても重要です。
結び目の部分を、”ぎりぎり”にカットした方が断然きれいに仕上がります。
切れないハサミを使うと繊維が毛羽立ってしまい、綺麗に仕上げることができません。
オススメは私も愛用している「CRAFT フッ素加工 手芸用ハサミ」です。
↓CRAFTハサミ。先端が尖っていて、とても使いやすいです。しかもフッ素加工されているので、接着剤が付着しても簡単に拭き取れ、べたつきません
(レザークラフトは、ゴムのり・ボンドがハサミに付着して切れが悪くなるのでフッ素加工品が良いです。)
裏面が見える場合(返し縫いしない場合)
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裏面が見える場合で、外見を重視して返し縫いしない場合の処理の仕方を説明します。
分かりやすいように、青と黄色の糸を使って平縫いしています。
まず、最後まで平縫いせず、3目手前まで縫い進め、裏側から糸が出た状態にします。
そのまま、青糸だけを使って3目波縫いします。
最後まで波縫いしたら、青糸を返し縫いして裏側から2本糸が出た状態にします。
返し縫いしたら、裏側から黄糸を、最後に通した青糸の穴に通します。
黄糸の針を刺したら、青糸を一回巻き付けます。
こうして糸を引っ張ると、縫い穴の中で黄糸と青糸が型結びされた状態になり、解れにくくなります。
結び目にボンドを少量塗布し、糸を引き締めて、結び目を縫い穴の中に隠してください。
先ほど通した黄糸の穴から目打ちを使って斜めに穴を空け、反対側の縫い穴に貫通させます。
目打ちで開けた穴に黄糸の針を通します。
黄糸に少量ボンドを塗布し、最後まで引っ張りましょう。
丁寧に処理すれば、ご覧の通り、表面から結び目が全く見えません。
最後に裏側に出た糸をハサミで処理すれば完成。
↓裏側から見ても、目立ちません。
裏面が見える場合(返し縫いする場合)
通常通り、末端まで縫い進めたら、2~3目返し縫いします。
表側から、2本とも糸が出た状態にしましょう。
黄糸の穴から、斜め裏側の縫い穴へ目打ちを使って貫通します。
黄糸の針を目打ちで広げた穴に通します。この時、解れないように少量のボンドを塗布しましょう。
青糸も同様に、目打ちで斜めの穴を空け、糸を通します。(ボンドの塗布もお忘れなく)
表側から見ると、全く糸の処理が分かりません。
最後に裏側に出た糸をハサミで処理すれば完成。
↓ご覧の通り、裏側から見ても、糸の処理が目立ちません。
仕上げ
縫い終わったら、縫った糸をハンマーで軽くたたいて馴染ませます。
縫ったままでは、糸がぼこぼこ出ているので摩耗しやすく、見た目も美しくありません。
ハンマーでたたくことで、面が平らになって糸が摩耗することもなくなります。
ちなみに、使用するハンマーは面が平らで凹凸や傷がないものを使います。
↓愛用のハンマー(両口クロムメッキ玄能)です。
クロムメッキで表面が鏡面仕上げになっていて、相当力を入れて叩いても革に打痕が残らない優れものです。このハンマーは革をたたく専用としています。これで菱目打ちを打つと傷ができてしまうので、専用にしているのです。
はじめまして
レザークラフトに興味も持ち始めたばかりでこちらにお邪魔しております。
正確に作られた作品がとても素敵です!
そこで道具選びで質問ですが、レーシングポニーは使用せずに手縫いされているのですか?
固定せず手縫いされて綺麗に出来るのがコツがあるなら教えてください!
はじめまして
私はレーシングポニーは使っていません。特に固定しなくても不自由はないですよ。コツなどもありません。
初心者の方は絶対に手で持って縫ったほうがきれいに仕上がりますよ。レーシングポニーは職人さんがすばやく作業するための道具で、きれいに仕上げるための道具ではないと思います。
ですが、撮影するときには便利そうなので(撮影栄えするので)使ってみようと思っています
あと、バッグのように大きなものを作る場合は必要かな?と思っています。(実際に大きなものを作ったことがないのでわからないのですが・・・)